みなさん、こんにちは。Kenです。このブログでは「翻訳を学ぶ人のための“絶対外せない”ワンポイント英語」と題して、主に原文理解に役立つポイントをお伝えしていきます。
「お伝えしていきます」と書くと皆さんに「お教えする」ように聞こえてしまいますが、実際は・・・。翻訳(=語学)は常に向上を図っていかなくてはならないもの。僕も学習者でありますので、自分の気がついた「なるほど!」を紹介する、というのがネタのソースです。一緒に学習する気持ちで読んでいただけたらいいな、と思います。
さて、今回は倒置についてです。まずは例文を見てみましょう。
And the rise of medication abortion has made possible a strategy that did not exist decades ago.
この文はThe New York Times で2022年6月6日に公開された “A Post-Roe America” という記事の、終わりから2つ目の段落の最後の文です。(URLは下記参照/無料登録要)
アメリカでの妊娠中絶の合法化・合憲化に関する記事で、個人で購入できる薬物によって、ときには違法に中絶ができしまうということを述べた箇所です。
倒置に関することがポイントだ、と知らなくても、なんとなくそれぞれの単語の意味から全体の内容を組み立てることはできますね。make possible 「可能にする」と覚えていると主旨は理解できると思います。しかし訳すべくじっくり見ていくとなると、has made possible a strategyのあたりが「落ち着かない」並びになっていることに気が付きます。「可能な戦略を作った」のようにも見えますが、それだとaの位置がpossibleの前に来るはずです。
「なんか変だな」と感じたら倒置を疑ってみましょう。この文は倒置しなければ、
And the rise of medication abortion has made a strategy that did not exist decades ago possible.
という並び方になるはずです。makeを使った第5文型(SVOC)で、「OをCにする」の形が使われています。上記の並び方が第5文型のセオリー通りの並び方なのですが、Cにあたるpossibleが1語のみで文末にあり、しかもOの部分(a strategy that did not exist decades ago)がやや長めのフレーズになっています。このような「頭でっかち」な構成は英語では読みにくいと感じられるので、このような語順になったと考えられます。
“なんとなく”で読めてしまって問題ないこともありますが、言葉を専門に仕事にする者としてはしっかりと構造を把握しておきたいものですよね。
【例文再掲】
And the rise of medication abortion has made possible a strategy that did not exist decades ago.
【訳例】
そして、服薬による妊娠中絶が広まったことで、数十年前であれば存在しなかった手段が可能となってしまっている。
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